告白  【連載レポート】強制不妊(2)

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記者会見で思いを訴える飯塚淳子。右腕には同じ被害者の親族から贈られたピンクのシュシュ(髪飾り)が巻かれていた。=2018年1月30日午前11時5分、宮城県仙台市青葉区一番町2丁目の仙台弁護士会館(C)Waseda Chronicle

仙台で住み込みで働いていた飯塚淳子は1963年の16歳のとき、3年ぶりに実家に戻った。ある日、お腹に激痛が走り、うずくまった。立っていられなくなった。今まで感じたことのない痛みだった。その痛みは、毎月やって来た。

何かがおかしい。あの「診療所」でされたことと関係あるに違いない(*1)。

淳子には診療所での記憶はない(*2)。目を覚ましたら診療所のベッドの上だったからだ。しかし淳子の疑念は深まっていった(*3)。

ある日、隣の部屋で、父と母が話し込んでいた。夫婦仲は良くなかったので、2人が話しているのはめずらしかった。淳子に聞こえてきたのは父の言葉だった。

「淳子は、子どもを産めなくする手術をされた」

淳子が生まれたのは、東北最大(*4)の河川、北上川の河口にある集落だった。

眼前に川、背後には山々が迫る。狭い土地に、50世帯ほどが暮らしていた(*5)。

海が近いのでホタテや昆布が採れた。だが、淳子の集落に船を持つ人はほとんどいなかった。生業は炭焼きぐらいだった。男たちは冬になると出稼ぎに出た。

集落の神社の宮司は「貧乏村って呼ばれていたな」(*6)と話す。2011年の東日本大震災では一帯が津波に襲われた。住居は流された。7年が経った今でも、背丈に迫るブタクサやススキ、ドロボウ草などの雑草が跡地を覆う。

淳子の家は集落の中でもさらに貧しかった。

父は身体が弱く、ほかの男たちのように長期の出稼ぎはできなかった。一家は生活保護を受けるようになった(*7)。

淳子が小学1年生の冬、住んでいた木造の家が全焼した。囲炉裏にくべていた薪が壁に引火したのだ。泥壁がはがれ、茅がむき出しになっていた。そこに火がついた。近くの竹やぶに避難したのをおぼえている(*8)。持ち出した布団以外、何も残らなかった。さらに貧しくなった。同じ集落にあった本家の納屋に身を寄せた後、中古の平屋に移り住んだ。

働けない父の代わりに、母親は人の何倍も働いた。夜、釜でワラビ(蕨)をゆがき、アクを抜く。翌朝、バスを乗り継いで石巻市まで行商に出た。ワラビを売り歩いた。昼頃に帰宅すると、畑仕事をしながら、山にワラビを採りに行った。母の目は寝不足のせいで焦点が合っていなかった。淳子は「ぐちゃぐちゃ」(*9)だった母の目をよく覚えている。憔悴しきった母は、赤ん坊の妹をおぶって北上川に入水自殺を図ったことがある。妹の泣き声で我に返って踏みとどまった。

幼かった当時の淳子は、そんな母の負担を少しでも減らさなければいけないという思いがあった。淳子は7人弟妹。下には3人の弟と3人の妹がいた。

3年ぶりに実家に戻った淳子は、近くの婦人科病院でお手伝いとして働くことになった。父が仕事を見つけてきてくれた。人の世話をするのが好きなので、性に合った仕事だった。

腹部の痛みはおさまらなかった。仕事を休まざるを得なかった。

(敬称略)

=つづく

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[脚注]

*1 飯塚淳子への取材、2017年6月22日午後2時から、仙台市内で。

*2 飯塚淳子への取材、2017年6月22日午後2時から、仙台市内で。

*3 飯塚淳子への取材、2017年6月22日午後2時から、仙台市内で。

*4 国土交通省「東北の一級河川:北上川」国交省ウェブページ(2018年2月23日取得、http://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/0204_kitakami/0204_kitakami_00.html)。

*5 飯塚淳子への取材、2017年8月30日午後2時30分から、仙台市内で。

*6 2017年10月30日午後3時すぎからの取材、宮城県石巻市内で。

*7 宮城県石巻福祉事務所「児童記録票」1959年。

*8 飯塚淳子への取材、2017年8月30日午後2時30分から、仙台市内で。

*9 2017年6月22日午後2時からの取材、仙台市内で。

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