【二階の硝子窓】お弁当とお医者さんとのほっかほかな関係

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山本 佳奈 (ワセダクロニクル コラムニスト / 内科医)

お弁当と医師との間に何かあるなと感じたのは、母校の大学病院で臨床実習をし始めた医学部5年生の春でした。医局の勉強会なのに、どうして製薬会社の方がお越しになっているのかと不思議だったのですが、新薬の説明が始まると、「なるほど。勉強会と称した薬の説明会なのか。」と医学生ながら納得したことを覚えています。というのも、製薬会社の方からの薬の説明は30分ほど。配布資料には、薬の説明が書かれたパンフレット他、製薬会社名や薬品名の書かれたメモ帳やボールペン、そして高級な弁当とお茶が必ずついてきたからです。

高級弁当を食べながら薬について説明を聞く医局もあれば、説明が終われば各々がお弁当を持ち帰り食べるという医局もあったように記憶しています。淡々と薬についての説明がなされ、さらには高級弁当までも配布される「勉強会」は、学生ながらに、この薬を使ってくれよ、と暗に言われているような気がしてなりませんでした。

しかしながら、当時の私は貧乏医学生。弁当が余った時には、持って帰っていいよと医局の先生から言われると、遠慮なくいただいて帰っていました。昼食代も、夕食代も節約できるのは、学生にとっては大変ありがたいことだったのです。

教授室をはじめとする医局の部屋の前に、製薬会社の方が直立不動でずらりと並んでいらっしゃる光景も、学生ながらに不思議だった光景でした。初めて見かけたのは、大学4年時でした。医学英語という授業で、母校の先生方の論文を読むという課題があり、たまたま外科系の教授の論文が私の課題となったのですが、論文を読む自体初めてであり、英語も苦手な上、内容について全く理解できなかったため、教授室まで出向き、質問をしに行ったことがありました。

アポイントをとったのは1時間だったにもかかわらず、2時間以上かけて熱心に教えてくださったのですが、そのレクチャーが終わって外に出ると、列をなした製薬会社の営業の方から一斉に視線を集める始末。申し訳なくその場を立ち去った、なんて経験をしたことは今でも鮮明に覚えています。

医師になって驚いたのは、福島県南相馬市で内科医として勤務していたときのこと。南相馬から東京までの交通費(新幹線代やタクシー代)や宿泊費が全額出すので、東京で開催される製薬会社主催の勉強会に参加しませんか、という話を製薬会社の方からされた時でした。なんと、仙台駅から自宅までのタクシーの送迎や東京駅からホテルまでのタクシーの送迎までついているという待遇。他の医師に聞いてみたところ、「勉強会には参加するが、目的はその前後に予定していることに決まっているじゃないか」と笑いながらおっしゃっていたことが印象的でした。

もちろん、薬にまつわるデータについて知りたいと思ったとき、製薬会社の担当者の方にデータを提供してもらったり、情報を共有していただくことはあります。けれども、高級なお弁当や交通費や宿泊費を出してもらうことは、患者さんのことを第一に考えた医療を提供することには繋がらないと思うのです。謝礼や食費、交通費を含む金銭を製薬会社から少額でもいただくということは、処方する薬の選択に無意識に影響を与えることは想像に難くないからです。

製薬マネーデータベース「製薬会社と医師」からもわかりますが、医師が皆、製薬会社から金銭提供を受けているわけではありません。むしろ、高額な金銭を受け取っていた医師は少数であり、受け取っていない医師が多いのも事実です。しかしながら、製薬マネーデータベースが広く共有されることで、あらゆるところに蔓延っている医師と製薬会社の癒着構造を打破することに繋がり、結果的に患者さん第一に考えた医療につながるのではないかと私は考えています。

コラム「二階の硝子窓」はワセダクロニクルのコラムニストが担当します。不定期の掲載です。

◉山本佳奈(やまもと・かな): 内科医。1989年生まれ。滋賀県出身。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバーザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。

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