「一部の医師に製薬マネーが集中」 / データベースの活用テーマに緊急シンポを早大で開催

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データベースの活用法について語る上昌広医師((中央)ら=2019年2月3日、早稲田大学(C)Waseda Chronicle

ジャーナリズムNGOワセダクロニクルと特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所は3日、緊急シンポジウム「医師が伝授する患者のための製薬マネーデータベース活用法」を東京都新宿区の早稲田大学で開いた。ワセダクロニクルの渡辺周編集長や同研究所の医師ら6人が登壇し、製薬会社と医師の関係や、データベースの分析結果について話した。参加者らは「医療とカネ」の実情に聞き入っていた。

シンポジウムは、2019年1月15日にマネーデータベース「製薬会社と医師」を無料公開したのを記念して開催。データベースは、製薬会社が自らのホームページで公開しているデータを元に、約3,000時間費やして開発された。2016年度に製薬会社から医師個人に支払われた金銭を一覧できるようにした。これまでに約140万のページビューあり、医師と製薬会社との利害関係を透明化する日本初のデータベースとして注目されている。(り)=学生リポーター

「医師の投薬判断に関わる問題」「みんなでシェアを」

第1部では、同研究所理事長の上昌広医師と渡辺周編集長が「なぜ製薬マネーデータベースが必要なのか」と題して対談した。

データベースの意義について話す上昌広医師(左)と渡辺周編集長=2019年2月3日、早稲田大学(C)Waseda Chronicl

上医師は「法律的には犯罪ではないが、医師の投薬判断に関わる問題だ。みんなでシェアして考えるしかない」と話した。渡辺編集長は「リクルート事件以来、政治とカネの問題はかなり厳しくチェックされてきた。ところが生活に身近な医師はどうだろうか。このアンバランスさを非常に感じていた」とデータベース開発の経緯を説明。また、「勢いはあるけれども、財政的に弱小の団体が3000時間、数百万かけてやってきた。皆さんと協力して、来年以降もバージョンアップしたい」と今後の抱負を述べた。

データベースに公開から140万ビュー、7万人が活用

第2部では、同研究所の医師ら4人が登壇し、データベースの活用例などを解説した。

医師と製薬会社の関係を話す山本佳奈医師=2019年2月3日、早稲田大学(C)Waseda Chronicle

山本佳奈医師は、医師と製薬会社の関係について語った。「製薬会社主催の勉強会が月数回開催されている。交通費、宿泊代が全額出る。タクシーのお迎えもついている」と医師に対する製薬会社の接待状況を述べ、「接待してもらうのが当たり前の医者になりたくない。患者のためになる薬を選択することが重要だ」と主張した。

医師らが製薬会社から受領した謝礼の合計金額の結果を示す谷本哲也医師=2019年2月3日、早稲田大学(C)Waseda Chronicle

谷本哲也医師は、厚労省の「薬事・食品衛生審議会」の委員らが製薬会社からの受領している金額について紹介。「最高額が1100万円。公益性の高いところにも製薬マネーが入っている」と話した。齋藤宏章医師はデータベースを活用し、内科学会や泌尿器科学会など19学会の理事計405人を対象に分析。謝礼金の受け取りがあった理事は87%計7億2448万円で、平均178万円だったという。「学会ごとに差があり、一部の医師に集中している」と結論づけた。

尾崎章彦医師は、データベースの活用実績について紹介。データベースは、これまでに約7万ユーザー、約140万アクセスあったという。データベースのユーザーへのアンケート結果では、「医師が営業担当者から贈り物をもらったり、食事などの接待を受けること」について、75%以上(「問題である」「どちらかというと問題である」の合計)が問題意識を持っていたことが明らかになった。尾崎医師は「医者の感覚が一般の人から見ると、違和感があるのだろうという結果あった」と話した。

「製薬マネーの抑止力に」

第3部は、渡辺編集長が司会を務め、5人の医師がパネルディスカッションを行った。

5人は、データベースの活用法や、公開の意義、これからの展望について話し合った。尾崎医師は、「ある医師が特定の薬について話していたら、その医師が製薬会社とお金をもらっているか調べてみるべきだ」といい、斎藤医師は「投薬の方針を決める大学病院の教授や科長と、製薬会社の繋がりを調べることにも使える」とデータベースの活用方法について提案した。

上医師は、「行政ではなく、民間のワセクロが行ったことに価値がある」とデータベースの意義を語り、山本医師は「医者の視点に立つと、製薬会社から薬について話を聞くことも必要。謝礼が払われているからといって全てを癒着と断罪すべきではない」ともコメントした。

また、「データベース公開によって、どのように社会が変化するのか」という参加者からの質問に対し、尾崎医師は「データベース公開が製薬マネーの抑止力になるのではないか。これから、医者たちが製薬会社主催の講演を受けるときに、躊躇することになるだろう」と述べ、谷本医師は「過剰処方などといった大きな医療問題を解決するための第一歩だ」と話した

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