中外製薬が賛同した「幽霊NPO」と消えたホームページ ── 隠された乳がんマネー(6)

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(読むために必要な時間) 3分50秒

この抗がん剤を使えば、乳がんの再発リスクが30%減る──。乳がん患者にとっての朗報が、世界一流の医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に掲載された。抗がん剤の名は中外製薬の「ゼローダ」。日韓の医師が、900人の患者を対象に臨床試験を行ったとしている。

しかし私たちは前回までで、その臨床試験が初めから中外製薬の紐付きだったことを暴いた。大きなカネが、NPO法人を通じて中外製薬から医師グループに流れ込んでいたのだ。医師グループは、中外製薬からのカネが入っていることを論文で申告せず、公にしなかった。

そのNPO法人は「先端医療研究支援機構」(ACRO=アクロ)である。ACROが紐付き資金の隠れみのに使われていた。

「紐付き」示す経理資料や銀行通帳

(写真上)ACROの銀行通帳のコピー。「チユウガイセイヤク」の入金は臨床試験「JBCRG04 」に使うことを示す手書きのメモがある(写真の一部を加工しています) (写真下)ARCOの「収支明細表」に記載された中外製薬からの「寄付金額」

中外製薬がACROに流したカネについて再度確認しておこう。

上の写真と表を見てほしい。私たちが入手したACROの銀行通帳のコピーと収支明細表だ。さらに私たちはACROの普通預金出納帳も手に入れた。つまり、帳簿だ。

収支明細表、銀行通帳、普通預金出納帳の三つの経理資料がピタリと一致した。この三つの資料から、中外製薬の資金が臨床試験に紐付いていたことを示した。詳しくは、第4回「動かぬ証拠」と第5回「銀行通帳に『チユウガイセイヤク』」に書いた。

ところが、中外製薬は私たちの問い合わせに対し「紐付き資金」ではないと反論する。

「ACROからの寄付申込に対して、ACRO全体の活動に賛同し寄付を行いました」(*1)

つまり、自社の抗がん剤ゼローダの臨床試験に紐付けてACROに資金を投入したわけではない、ACROの様々な活動全体に対して寄付をした、ということだ。

ACROを訪ねてみることにした。

ピンクの洋館

登記簿に記載されたACROの住所を訪ねるとピンク色をした建物があった=2019年12月9日、埼玉県久喜市内 (C)Waseda Chronicle

ACROの正式名称は、「特定非営利活動法人先端医療研究支援機構」という。登記簿では、事務所の住所が埼玉県久喜市になっている。

東武伊勢崎線の久喜駅から徒歩5分。住宅街の中にその建物はあった。

ピンク色の2階建て洋館があった。事務所というよりは一般の住宅だ。

「ACRO」の表札もない。中に人がいる気配もない。

近所の住民たちに「これはACROの事務所ですか」と聞いてみた。

「さあ。この辺は住宅街ですからねえ」

「この家に人が出入りするのを見たことないですよ」

耳寄りな情報は得られない。

あきらめて駅へ引き返そうとした時、配達員が隣の家の前にいた。配達員は答えた。

「そうです、ACROの事務所です。この夏までは人がいたんですけどね。今は建物を管理する人が週に1回来るくらいですよ」

このピンク色の洋館が、ACROの事務所だったことはわかった。

しかし、今はどうなっているのか?

そもそもこんな無人の建物が、中外製薬が「活動に賛同して」億単位の資金を寄付していたACROなのだろうか?

もう一つ手がかりがあった。ピンク洋館の郵便受けに、東京の経営アドバイザー会社の名前を記したステッカーが貼ってあったのだ。

私たちはその会社に電話した。

活動休止、そのわけは?

電話で分かったことは、その経営アドバイザー会社がACROの事務局を請け負っているということだった。担当者の男性は不在だったが、3日後に電話がかかってきた。

その担当者によると、ACROは活動を休止しているということだった。その担当者自身、2年前からACROの手伝いをしているくらいで、「事務局」といえるようなものではないという。

ワセクロのシリーズ「隠された乳がんマネー」は読んだが、シリーズの中の写真に出てくる経理資料はACROのロゴが使われているので、「本物の経理資料なんだろうな」という程度の感想だったという。

私たちが、ACROのホームページにアクセスしたところ、2020年2月17日午後12時38分、「403 Forbidden」となった。つまり、ホームページがなくなった、ということだ。

活動の実態もなく、ついにホームページも閉じたACRO。

ACROとはどんな組織なのか。

私たちは、ある「事件」がACROで起きていたことを突き止めた。

ACROの消されたホームページ。しかし過去のホームページはアーカイブ化されていて、今でも閲覧できる

(敬称略)

=つづく

【脚注】

*1 2019年12月4日回答。

【関連記事】

▽シリーズ「隠された乳がんマネー」

2019.12.07 「清水の舞台」から飛び降りた32歳の医師

2019.12.08 「『京セラの稲盛さん』で警告

2019.12.09 「NPO法人で『ロンダリング』

2019.12.10 「動かぬ証拠

2019.12.11 「銀行通帳に『チユウガイセイヤク』

2020.01.17「中外製薬が賛同した「幽霊NPO」と消えたホームページ

2020.02.19「5億2000万円の横領を警察には届けなかった

2020.02.21「紐が付かない寄付金はない

2020.03.03「戸井医師にご確認を」

2020.03.04「逃げる責任者

2020.03.11「京大病院、『警察』を持ち出す

2020.03.12「日本医学会が動いた

【関連シリーズ】

▼シリーズ「買われた記事

▼シリーズ「検証東大病院 封印した死

▼シリーズ「製薬マネーと医師

【関連データベース】

マネーデータベース「製薬会社と医師

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