丸紅が出資の石炭火発事業めぐり、韓国・現代建設幹部に贈賄容疑 インドネシアの捜査機関

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インドネシア西ジャワ州のチレボン石炭火力発電所2号機の建設をめぐり、建設工事を請負っている韓国の現代建設の幹部が、建設事業の許可を得る見返りに前チレボン県知事に60憶4,000万ルピア(約4,670万円、1ルピア=0.0077円)を渡した疑いがあることがわかった。

インドネシアの独立捜査機関、汚職撲滅委員会(KPK)が2019年11月15日、首都ジャカルタで会見し、同社幹部を贈賄側の容疑者として認定したと発表した。同発電所の2号機は、大手商社の丸紅が中心となって出資する事業体が建設を進めており、そこに日本の国際協力銀行(JBIC)や韓国の政府系銀行などが融資している。

JBICは、海外経済協力など国際投融資のために日本政府が全額出資してつくった政府系銀行。

  • ワセダクロニクルは、インドネシア西ジャワ州のチレボン石炭火力発電所をめぐる問題を、韓国のニュース打破(KCIJ/Newstapa)とインドネシアの有力誌テンポ(Tempo)と共同で取材しています。

建設が進むチレボン石炭火力発電所2号機=インドネシア西ジャワ州、2019年7月、FoE Japan提供

韓国・現代建設の幹部が前知事に供与の疑い

KPKの発表によると、贈賄の疑いで容疑者認定されたのは韓国籍のヘリー・ユン容疑者で、現代建設のゼネラル・マネジャーという。ユン容疑者は、チレボン県のスンジャヤ・プルワディサストゥラ前知事に対して60憶4,000万ルピアを渡した疑い。

一方のスンジャヤ前知事はKPKの調べに対して、2号機の建設を認可する見返りに、100憶ルピアを受け取る約束をしたと話しているという。

ジャカルタに事務所のある知事系の企業は100億ルピアの架空案件の契約を結び、その企業の銀行口座には、2017年6月、2018年の1月、2月、3月、10月、計63億6,998万5,000ルピアが振り込まれたという(*1)。

「仲介者を通じて金銭の供与」

KPKのサウット・シトゥモラン副委員長は会見で「ユン容疑者はスンジャヤ前知事に対し60憶4,000万ルピアの賄賂を供与した疑いが持たれている。金銭の供与は仲介者を通じでおこなわれた疑いがある」と語った。

KPKは、スンジャヤ前知事は受け取った金銭で、別人の名義を使って土地や車を購入したとみて捜査を進めている。スンジャヤ前知事は別の贈収賄事件で禁固5年の判決を言い渡されている。

KPKはスハルト元大統領のもとで汚職が深刻化したことを受け、公的捜査機関として2002年に発足。警察や検察と同様に逮捕や起訴をする権限を持っている。2018年にKPKが汚職で立件した容疑者は261人(*2)。

しかし、今年9月の法改正で大統領がKPKに影響力を行使できるようになり、市民から抗議の声が上がっている。

政府系銀行が融資

チレボン石炭火力発電所をめぐっては、日本、韓国、インドネシアの企業が現地に会社をつくって運営している。

最大の出資者は丸紅。さらに現地の会社に融資の形で資金を融通しているのが、日韓の銀行団だ。JBICは日本政府が100%出資する銀行で、財務省が管轄している。

1号機は2012年に稼働し、地元の住民からは健康被害や水質の汚濁を指摘する声が上がっており、抗議活動が起こっている。今回、KPKが汚職摘発の捜査に乗り出したのは、2号機の建設だ。総事業費は2,260億円、日本からは新たに東京電力や中部電力も加わっている。

今回、贈賄の容疑者認定されたユン容疑者の現代建設はこの2号機の建設業務を請け負っている。

現地の事業会社が住民対策のために設けた出先事務所=2017年8月31日、インドネシア西ジャワ州チレボン県(C)Waseda Chronicle, KCIJ/Newstapa, Tempo

過去にも汚職事件

丸紅が絡むインドネシアでの石炭火力発電所事業を巡っては、過去にも贈収賄事件があった。

その時の舞台になったのは、スマトラ島・タラハンの発電所。丸紅が2004年に受注したボイラー案件を巡り、丸紅が米国の会社と共謀してインドネシアの国会議員や国有電力の幹部に賄賂を贈った。米国の企業が絡んでいたことから米司法省が捜査。丸紅が贈賄を認め、2014年3月19日、8,800万ドルの罰金を払うことで米司法省と司法取引をした(*3)。

外務省は、タラハンの石炭火力発電事業が途上国援助(ODA)であったため、丸紅を9ヶ月間のODA排除処分にした(*4)。

財務省は「JBICに事実確認を指示」

インドネシアの独立捜査機関が現代建設幹部を贈賄の容疑者認定にしたことについて、ワセダクロニクルは見解を求めた(*5)。

政府系銀行のJBICを監督する財務省は「疑惑が発覚した5月以降、JBICに対して、継続的に事実確認の指示を行なっている」と答えた。

一方、JBICは「個別案件についてはお答えできません」といい、回答を拒否した。

また、事業への最大の出資者である丸紅は「現地に詳細を確認中」と答えた(*6)。

===

【取材】

ワセダクロニクル/Waseda Chronicle・ニュース打破(KCIJ/Newstapa)テンポ(Tempo)

【パートナー】

国際環境NGO FoE Japan・インドネシア環境NGO ワルヒ(WALHI)

【脚注】

*1  Putusan PN BANDUNG Nomor 14/Pid.Sus-TPK/2019/PN.Bdg Tahun 2019

*2 朝日新聞2019年9月19日電子版「汚職捜査、国会が骨抜きに 市民反発『大統領うそつき』」、朝日新聞ウェブページ(2019年11月16日取得)

*3 丸紅「インドネシア火力発電所向ボイラー案件に関する米国司法省との合意について」2014年3月20日、丸紅ウェブページ(2019年11月18日取得)。

*4 外務省「我が国の政府開発援助(ODA)事業において不正行為を行った企業に対する措置の実施」2014年3月26日、外務省ウェブページ(2018年11月18日取得)。

*5 2019年11月18日、電話で。

*6 2019年11月18日午後4時現在。

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(ワセダクロニクル)

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(ニュース打破)

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(テンポ)

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