香川大教授、認知症薬の製薬6社から年間1900万円超の副収入──製薬マネーと医師

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認知症治療薬は本当に効くのだろうか?

効いたとしても、怒りっぽくなったり、下痢をしたりといった副作用の方が効果よりひどいのではないだろうか?

認知症の患者を持つ家族を取材していると、こんな疑問をよく聞く。

2018年にはフランスが、アルツハイマー型認知症治療薬を医療保険の適用から外した。「副作用に比べて効果が不十分だ」というのが理由だ。

しかし日本では、認知症治療薬の使用は診療ガイドラインで推奨されている。薬の効果について疑問視する声は医師たちからあまり聞こえてこない。

認知症の分野で影響力のある医師と、製薬会社の利害関係はどうなっているのか? 製薬マネーデータベースで調べてみると、香川大学医学部の、ある教授にたどり着いた。

診療ガイドライン発行年に委員平均170万円

アルツハイマー型認知症の治療薬は5製品あり、6社が販売している。アリセプトは1999年から販売が始まり、他は全て2011年に登場した。

アリセプト→エーザイ

メマリー→第一三共

レミニール→武田薬品、ヤンセンファーマ

リバスタッチ→小野薬品

イクセロンパッチ→ノバルティスファーマ

これら同種の薬は全て、フランス当局が2018年に医療保険の適用から外した。理由は「これらの薬を使うことで症状が緩和するという証拠が不十分な一方で、有害な副作用を無視できない」というものだった。

だが日本では保険が適用される。日本神経学会などが参加し、2017年に発行された最新の認知症診療ガイドラインでは、これらの薬の使用を推奨している。診療ガイドラインは、医師が薬を処方する際に参考にする。影響力は大きい。

ワセダクロニクルは、医療ガバナンス研究所と共同で制作した製薬マネーデータベース(2017年度版)で、認知症の診療ガイドラインを作った医師23人について、認知症治療薬を販売する6社から得た副収入を調べた。副収入とは、製薬会社が主催する講演会での謝金、コンサルティング料、製薬会社のパンフレットに掲載する原稿執筆料などだ。

その結果、23人が製薬会社から得た収入の平均は170万円だった。最も多かったのは精神医学分野の大阪大教授で497万円。400万円以上はこの他に、高齢総合医学の東京医科大教授、老年病科の東大教授、脳神経内科の鳥取大学講師だった。

医師約30万人のうち、製薬会社から副収入を得ているのは約10万人。10万人が受け取っている金額の平均は28万円だ。認知症の診療ガイドラインの作成委員は、その6倍を受領していることになる。

ところが、この診療ガイドラインの委員を桁外れで上回る認知症の研究者がいた。

国会資料に名前

香川大医学部精神神経医学講座の中村祐教授だ。

2019年11月6日に開かれた衆議院厚生労働委員会で公にされた。文科省が私たちワセクロと医療ガバナンス研究所の製薬マネーデータベースを使い、2016年度に1500万円以上の副収入を得た29人の大学勤務医の名前を調査したのだ。各大学に兼業規定と倫理規定の見直しを求めるためだ。文科省の調査と同じ内容の資料を、岡本充功議員(当時国民民主党・現立憲民主党)が同委員会に提出した。

29人の中で受領額が2番目に多かったのが、認知症の研究者である中村教授だった。製薬会社から計2583万円を受け取り、そのうち認知症治療薬を販売している6社からは約8割の1956万円を得ていた。

ワセクロはさらに2017年度版のデータベースでも中村教授の受領額を調べてみた。計2225万円で、認知症治療薬を販売の6社からは1894万円だった。

中村祐教授が認知症治療薬販売の製薬6社から得た副収入

中村教授とはどんな医師なのか。

衆院厚生労働委で提出された資料には、時事通信の医療ニュースサイトである「時事メディカル」での紹介記事が引用されている。

「中村祐医師はノーベル医学生理学賞の選考委員会が設置されていることでも有名なスウェーデンカロリンスカ研究所で老年医学講座の客員教授を務めるなど、長年、アルツハイマー型認知症の治療薬などの新薬の研究・開発に取り組んでいる。2011年に自身が開発に深く関与した抗認知症薬3剤が承認された。これによって患者の選択肢が増え、患者・介護者いずれも認知症治療に対する満足度が上がったという。早期発見・治療による症状の進行抑制の重要性を訴える」

紹介記事の中にある「2011年に自身が開発に深く関与した抗認知症薬3剤」は、いずれもフランスが効果を疑問視して保険適用から外した薬だ。日本国内の患者や家族からも効果について疑問の声が上がっている。

中村教授はどう考えるのだろう?ワセクロは、中村教授に取材を申し込むことにした。

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