強制不妊の国賠訴訟棄却/原告男性「他の被害者のためにも死ぬまで闘う」

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  • ▶︎ 辻麻梨子 ワセダクロニクル リポーター

請求棄却の判決への怒りを語る北三郎さん=2020年6月30日、東京都千代田区(C)Waseda Chronicle

旧優生保護法の下で強制的に不妊手術をされた北三郎さん(仮名・77)が、国に対して3000万円の国家賠償を求めていた裁判で、2020年6月30日、東京地裁が北さんの請求を棄却した。北さんは判決後「他の被害者のためにも死ぬまで闘うつもりだ」と語り、控訴する方針だ。

東京地裁は、20年で賠償請求権が消える「除斥期間」が適用されると判断した。原告側は「子どもを産めない体にされた被害は今も続いている」と除斥期間は適用されないと主張したが、東京地裁は「損害は手術時に発生した」と受け入れなかった。

原告代理人の新里宏二弁護士は、「旧法には、相手を騙して手術をしてもいいという内容が含まれていた。今も自分が手術をされたことすら知らない人もいる。被害をわからなくしておきながら、除斥期間を通常の20年として適用するのは、旧法の加害の構図を理解していない」と判決を批判した。

伊藤正晴裁判長は、実子を持つか自らの意思で決める自由を憲法13条が保障しているにも関わらず、強制不妊手術はその自由を侵害することは認めた。

その一方で旧優生保護法自体の違憲性には言及しなかった。2019年5月に仙台地裁が強制不妊被害者に出した初の判決では、旧優生保護法自体の違憲性を認めている。

北さんは1957年ごろに宮城県内の病院で事前の説明もないままに手術された。当時14歳だった。長年の間、妻にも手術をされたことは打ち明けられなかった。1例目の提訴が報道され、旧法に基づく手術であることを初めて知った。公的な手術記録は廃棄されていたが、手術の形跡を認めた医師の意見書をもとに、2018年5月に訴訟に踏み切った。

北さんは判決後、声を張り上げて怒った。

「もうなんと言っていいかわからない。国は勝手に私の体にメスを入れて、責任はもうないと。そんなことで許せるわけはありません」

ワセダクロニクルは2018年から強制不妊手術の実態を報道している。手術は厚生労働省の指示を受けた都道府県によって、競い合うように行われ、時には嘘をついたり騙したりして強行されてきた。手術を行うかを決める検討会には福祉職員や医師、地元紙の幹部までが加わり、官民一体の政策として推し進められてきたことがわかっている。

強制不妊手術をめぐっては2019年4月に、被害者に対して一時金320万円を支給する救済法が議員立法で成立した。2020年6月には衆参両院の事務局が実体調査を始めたほか、日本医学連合会は「旧優生保護法の検証のための検討会」で次のように報告した。

「法改正後においても、強制不妊手術や被害救済に向けて直ちに行動を起こさなかったことに対する深い反省と、被害者およびその関係者に対し、心からのお詫びの表明が求められる」

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