消費者庁「新聞社本体は取り締まれない」──高齢者狙う新聞販売(4)

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東京・霞が関の消費者庁

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新聞社103社が加盟する日本新聞協会は、認知症の高齢者らへの押し売りを「消費者とのトラブル」とごまかした。自ら調査もしていない。新聞協会には、当事者として事態を解決しようという姿勢は見られなかった。

政府は2015年、拒否の意思を示す相手への訪問販売の禁止を検討した。しかしそれは、新聞協会の抵抗で実現しなかった。このことはシリーズの2回目「日本新聞協会の抵抗」で報じている。

それから5年。高齢者への押し売りは相変わらず横行している。政府は何か対策を検討しているのだろうか。押し売りを取り締まる消費者庁を取材した。

「威迫困惑」すれば3年以下の懲役・300万円の罰金

2020年12月22日、消費者庁取引対策課の関口岳史・消費者取引対策官に会った。関口対策官は弁護士出身だ。彼は、押し売りを取り締まる法律「特定商取引法」(特商法)のポイントを解説した。

特商法に違反すれば、3年以下の懲役か300万円の罰金、またはその両方だ。業務禁止命令や2年以内の業務停止命令もある。

勧誘の際に相手を「威迫して困惑させる」ことは禁じられている。

ワセクロが取材したケースでは、大阪府堺市の府営住宅に暮らす男性(84)が、読売新聞の訪問と電話による強引で執拗な勧誘で、勧誘員が夢にまで出てくるほど怯えていた。特商法が禁じる行為に当てはまる。

「高齢者の判断力不足につけ込む」ことも禁止されている。

ワセクロが取材した認知症の女性(84)への場合が当てはまる。読売、朝日、産経、毎日の4紙と契約を交わしたことを娘(45)に問われ、「何かの間違いではないか」と、契約したことすら覚えていなかった。女性は月11万円の年金暮らしで、複数の新聞を購読する余裕などない。にもかかわらず販売店員に押し売りをされている。

消費者庁対策官「ビジネスモデルの転換なしには・・・」

問題は、新聞社本体に特商法が及ばないことだ。

押し売りの事実が認定されても、「それは販売店がやったことで、新聞社は関与していない」とトカゲのしっぽ切りに終わってしまう。

関口対策官はいう。

「新聞の契約は特殊です。我々が新聞を購読する場合、それは読売新聞社や毎日新聞社との契約ではなく、販売店との契約になる。だから処分対象は販売店です。新聞社本体に対しては、消費者庁から任意で善処を要請することはできても、処分はできないんです」

では打つ手はないのか。

「(新聞社が販売店を)自分たちの手足として使っている以上、被害が大きくなってきたら(新聞社に対して)何かいわなきゃいけない時というのはあるかもしれません」

被害のケースの実態を見れば、今こそその「被害が大きくなってきた」時だ。

だが、消費者庁が新聞社に何か効果的な働きかけをしている事実はない。

関口対策官は、「ピンポン押して新聞を勧誘するビジネスモデルは破綻しています」。行政が新聞社を取り締まらなくても、そのうち新聞の訪問勧誘自体がなくなるという見方だ。

=つづく

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