(フォト・レポート) ジャーナリスト殺害への抗議、続く「真実と正義」求める行進@マルタ・バレッタ

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写真・文 友永翔大 / ワセダクロニクル

フランスに留学中の僕は、11月22日の昼、パリのルーブル美術館前にあるカフェで苦いエスプレッソを飲んでいた。スマホを見た。NHKの電子版ニュースに目が止まった。「マルタの女性記者殺害事件 仲介役の男逮捕 捜査進展も」とあった。記事を読むと、19日に男の逮捕を警察当局が発表したとのことだった。

逮捕が発表された日の3日前、僕は、殺害されたその「女性記者」、ダフネ・カルアナガリチアさん(当時53)の故郷マルタにいた。地中海に浮かぶ島の共和国。東京23区の半分ほどの大きさだ。彼女はパナマ文書をもとに、マルタのジョセフ・ムスカット首相の汚職を追っていた探査ジャーナリストだった。

ダフネさんが殺害されたのは、2017年10月16日。以来、彼女の月命日の「16日」になると、マルタの首都バレッタで、ダフネさんの死の真相の究明と汚職の排除を求めるデモ行進がある。デモの名前は「真実と正義のための静かなる抵抗」。

僕は11月の「16日」にあったデモを取材した。

午後7時すぎ、市街の中心を走る大通りを裁判所に向かってデモ行進が始まった。

ダフネさんの顔写真を掲げる人、「真実と正義を」と書かれたプラカードを手にする人もいた。白髪の男性から、青いシャツを着た子どもまで、たくさんの人が集まった。参加者はおよそ数百人。沿道のカフェのテラス席にいた人たちは立ち上がってデモ隊に拍手を送った。

遺族で、ダフネさんの妹、マンディ・マリアさん(52)の姿もあった。マリアさんは姉の死後、欠かさず参加している。

「彼女は政府の腐敗を暴こうとして殺された。私は正義を求めています。たとえ、ダフネが私の姉でなかったとしても、私は参加します」

裁判所前には特設ステージが設けられ、ダフネさん殺害に抗議する集会が開かれた。デモに参加していた人たちが合流した。

集会が終わりになる頃、周囲の照明が消された。そして、参加者たちはスマートフォンのライトを一斉に灯した=写真上、2019年11月16日午後8時38分。その光は「希望」を意味しているという。

忘れない

ダフネさんが殺害された16日に毎月行われている「真実と正義のための静かなる抵抗」。ダフネさんの殺害からすでに2年以上が経っている。実行犯は殺害の2週間後に逮捕された。だが、事件を指示した人物はわかっていない。「真実と正義のための静かなる抵抗」の3日後の2019年11月19日には、殺害を仲介したとされる男を14日に逮捕したと警察が発表した。その翌日には地元の大物実業家が重要参考人として身柄を拘束された。ダフネさんの遺族はダフネ財団のホームページ上で「権力による捜査の妨害を許さない」と発表。捜査が政治的な圧力で妨害されないよう要求した。(写真上:2019年11月16日午後8時11分、写真下:同午後7時32分撮影)

一夜だけの追悼台

首都バレッタの裁判所前には3体の銅像がある。銅像はそれぞれ、信仰・不屈・文明のシンボルだ。その銅像の台座にダフネさんの写真が置かれ、ろうそくが灯された。デモのたびに作られる「1日だけの追悼台」だ。翌日には法務省の指示で片付けられてしまう。この日も、道ゆく人々が「1日だけの追悼台」の前で立ち止まる。ダフネさんについて話し始めるカップルや撮影する男性、膝をついて花やろうそくを供える女性。「1日だけの追悼台」の前には絶えず人がいた。(写真上:2019年11月16日午後7時32分、写真下:同午後7時12分)

花とろうそく

ダフネさんの殺害現場はバレッタから首都バレッタから車で30分ほど。ビドニジャという地域で、マルタ島の北側、内陸部に位置している。ダフネさんが運転中に爆破され、骨組みだけになった車は畑に転落した。その場所には、そうそくや花が供えられている。現場の周辺には、背の高い木がなく、見晴らしが良い。遠くには海や日光に照らされて白く光る都市部が見える。ハトが辺りを飛び回り、足元ではぴょんとバッタが跳ねていた。道路標識を見ると笑顔のハリネズミが描かれている。ダフネさんは自宅を車で出発した直後に爆殺された。殺害を指示した人物は今もわかっていない。(写真:2019年11月16日午前11時13分)

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