アリンコの知恵袋②タブーなき作家「五輪は国家を挙げた電通の金儲けの祭典、国民は搾取されるな」

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「アリンコの知恵袋」第2回目の講師は、作家の本間龍氏。「電通による電通のための東京五輪~ガリバーの犠牲になるのは誰か~」と題して語った。

 本間氏は「落ちるところまで落ちた」後に、這い上がってきた人物だ。

 博報堂社員だった2000年代、クライアントの不払いで発生した損金を「出世に響いてはまずい」と自身で補填。だが補填した金を返済できず、知人への詐欺をはたらいたとして有罪判決を受けた。栃木県の黒羽刑務所で1年間服役した。

 出所後は、作家として再起した。

 「原発プロバカンダ」(岩波書店)、「電通巨大利権」(サイゾー)、「広告が憲法を殺す日」(集英社新書、共著) など大手メディアが触れないタブーに迫った著書を続々と出した。

 執筆にあたっては自ら国会図書館に通い詰め、情報公開請求を行い、各界の「ディープスロート」に取材する。今回の講座ではそうやって得た情報を元に、東京五輪を「国家による国民動員実験」だと警告した。【辻麻梨子】

タブーなき作家の本間龍氏。ワセクロとのコラボも計画中だ

五輪招致決定後に電通社長が「1兆円宣言」

 2013年、東京での五輪開催が決まった。

 その時、電通の石井直社長が社員に向けたメールで訓示を出している。ある電通役員から入手した内容はこうだ。

「電通は次期東京オリンピックで、売上高1兆円を達成する」

 今回の五輪は電通が金もうけをするための「商業五輪」だということを象徴する発言だ。

 電通は1社単独で年間1兆5千億円、グループ会社を含めると5兆3千億円を売り上げる超巨大企業である。国内では次点の博報堂に2.5倍近い差をつけてトップを独占。世界ではJWT(ジェイ・ウォルター・トンプソン)などを傘下に置く英国のWPPグループや米国のオムニコムグループなどに続いて5位に位置する。

 日本では自民党をクライアントとし、現政権の政策プロモーションを担う。

 JOC(日本オリンピック委員会)、政府、官公庁、東京都、スポンサー企業でつくられる東京五輪の組織委員会も、蓋を開ければ3分の1ほどは電通の社員ではないかと予測できる。

 目的は売り上げ1兆円の達成。具体的には、海外のテレビ局などが五輪の試合を放送する際の放映権の販売、テレビの五輪特集番組のスポンサー仲介、ロゴやマスコットキャラクターの使用料など、五輪にまつわるあらゆるコンテンツが儲けになる。

 これは国民の祭典などではない。

 電通による電通のための五輪なのだ。

見積もりの「5倍の税金」が五輪に

 今回の大会にかける予算も莫大だ。

 招致前にIOCに提出された立候補ファイルの中では、約8000億円と試算されていた。「世界一コンパクトな五輪」「復興五輪」などと、低予算で開催されることが強調されてきたのだ。しかし新国立競技場の建設や予想される酷暑への対策で右往左往。会計検査院の調査によると、支出費用の見込みは3兆円規模に膨れあがった。また税金による五輪関連の予算もすでに従来の見積もりの5倍以上を支出している。

 東京五輪には税金のほか、スポンサー企業からの協賛金が集まる。スポンサー企業は50社以上。金額は公表されていないが、過去のデータから1社につき30~150億円を提供していると推計している。金額によって「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」などとランク分けされているが、これほど多くの企業がスポンサーになるのも東京五輪特有だ。1業種に1社までという規定があったロンドン五輪、リオ五輪は15社程度に留まっている。

 IOCは国内企業からの協賛金として、すでに3160億円以上を集めたと発表した。計算してみるとさらに多い、4650億円だ。

広告代理店に勤めていただけあってパワポを使ったプレゼンは巧みだ

儲けても「断固無償」ボランティア、朝日は募集記事

 これだけの金額を集める東京五輪だが、運営に関わる一般市民のボランティアの募集では断固として「無償」という条件を貫いている。

 総勢11万人ものボランティアの仕事は大会進行や街中での案内だけでなく、医療・通訳などの専門的なスキルが必要になる場合もある。彼らも含め、全員が1000円の交通費と1日1食の弁当で、1日8時間以上、合計10日以上のタダ働きを求められるのだ。

 会場周辺のホテルは、すでに組織委員会によって約4万6千室が、大会関係者用に仮抑えされている。また通常時より価格が高騰しているものの、もちろん宿泊費も支給されない。

 また大会期間中の東京は例年のように猛暑が予想される中、暑さ対策も迷走。

 「打ち水」や「降雪機で雪を降らす」、挙げ句の果てには「朝顔の鉢を並べる」など、効果を疑う驚きの案が続出している。組織委員会はボランティアに対しても、水分補給などの「自己管理」を促す始末だ。万が一のことがあった場合に、責任をとる部署や担当者も公表しない。メディアもこうした危険性についての報道には、消極的だ。

 朝日新聞など大手在京新聞が公式スポンサーに名を連ね、ボランティア募集の記事や広告を掲載してきた。

あなたの子どもも「動員」?

 自分には関係ない。そう思うかもしれない。しかし、否応なしに巻き込まれる可能性がある。全国の小学校や保育園、都立の高校などで人権教育の一環という括りで「五輪教育」が進められているからだ。教育委員会は公立校などに、五輪公式マスコットキャラクターを使った校内イベントの実施も呼びかけているが、20万円以上する主催費は学校もちだ。

炎天下での聖火リレーの応援や試合観戦などのボランティアへの参加は子どもにとって命に関わる危険もありうる。しかし教育委員会からの要請とあり、学校側も困惑している。もはや戦時中の学徒動員の様相を呈しており、あなたの子どもだって「動員」されるかもしれないのだ。

「祝賀資本主義」で首都高値上げ

 こうした搾取の状況は、東京五輪というイベントを通して顕在化した新しい洗脳ともいえる。

 米国の社会学者ジュールズ・ボイコフが名付ける「祝賀資本主義」という考え方だ。五輪に代表されるような「祝賀」が求められるビッグイベントが起こると、あらゆる例外状態が許容され、お祭り状態の中で通常時は出来ないような政策やルールの改定が行われる。

 猛反対により断念されたサマータイムの導入や、首都高の値上げもその動きの一つだ。

 祝賀資本主義を受け入れる国民は、脅されたり直接暴力を振るわれたりするわけではない。むしろ、「歓迎すべき五輪」というプラスの印象を持って、自ら進んで協力するのだ。

 こうした空気の醸成は、金と権力をもつ電通が放つ多種多様なプロモーションの「成果」だといえる。

 長い時間をかけてじわじわと国民の心に染み込んだ五輪歓迎ムードを利用し、最後に大金を懐に入れるのは電通というガリバーである。

 私の意見を大手メディアは取り上げない。「放送禁止物体」にされているのだ。

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